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日本貿易振興機構大連事務所(ジェトロ大連)所長 荒畑 稔さん arahata minoru

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「大連は前任地の福岡と似ている街。どちらも街がコンパクトにまとまって、馴染みやすさを感じます」

 大連に赴任されてまだ1か月ちょっと(取材時)ですが、まずは大連の印象についてお聞かせください。

 大連にはこれまで出張ベースで2、3回来たことがありますが、この1か月を過ごしてみて、前任地の福岡と似ている街だと感じました。大連も福岡も港町で物流のハブでもあり、街がコンパクトにまとまっています。大都会でもないけれど田舎でもない。そう言えば私が10年前に勤務していたころの台北に近いかも知れませんね。ちょうど台北では地下鉄工事をしていましたし、街には日本料理店も多くありました。大連は馴染みやすさを感じます。

 ご経歴を拝見すると、中国関係ひと筋ですね。中国に関心を持たれたのはいつごろですか。

 初めて中国を訪れたのは、1981年の高校1年生の春休みでした。東京都の国際交流団の一員として、船で2週間の日程で天津から北京、さらに天津から上海を訪問しました。中国の高校生たちとも交流しましたが、当時はまだ人民服の時代で、私たちのそろいのブレザーを珍しそうに見られたのを覚えています。万里の長城の大きさにも圧倒され、将来は中国に関係した仕事に就きたい、と思いました。

 その念願が叶ってジェトロに入会し、中国関係の仕事に携わってこられたのですね。しかし、中国本土は今回が初めてですね。

 これまで、台湾、香港など中国本土周辺の島を回っていたので、そろそろ本土のどこかに行くだろう、とは思っていました。

 東北3省をカバーする大連に着任されましたが、この地域の経済状況、将来性について、どのように見られていますか。

 とにかく1か月ですので、8月下旬にハルビンに行っただけです。これから9月上旬の北東アジア博覧会に参加するため長春に行きますが、自分の目でこの地域を見て状況を把握したいと思っています。今の段階では印象しかありませんが、大連は物流機能が発達し、吉林、黒竜江省は資源に恵まれ、穀倉地帯であるという認識です。いずれにしてもこれから各地を回りたいと思います。

 日本企業にとって、大連をはじめとするこの地方は、どのような展望が持てるのでしょうか。

 中国経済が減速している中で、どうとらえるのか、まだ見えにくい部分もありますが、今後は自分の目で確かめたいですね。いま現在、大連に言えることは、日本企業にとって、中国マーケットに入りやすい地域だと言うこと。日本語人材が豊富ですし、東北地方の玄関口であり、物流機能も整備されています。ジェトロ大連としましても、この地域に進出する企業を支援して行きたいと思っています。

 ジェトロ大連の具体的な役割についてお聞かせください。

 日本企業はこれまでの生産・加工の業種だけでなく、内販を目指すサービス業も中国に進出しています。こうした日本企業に商談の機会を提供することも、わたしたちの使命だと思っています。今秋には大連で漁業博覧会が開かれますが、会場にジャパンブースを設け、日本企業に出展していただきます。また、今年11月にはサービス産業を中心としたミッションを計画して、大連、瀋陽の現状と投資環境を見ていただこうと考えています。

 特に中小企業にとって、こうした機会は中国進出を考える上で貴重ですね。

 それだけではありません。ジェトロには海外アドバイザーがいますので、ソフト面でも丁寧に対応させていただいています。また、福岡勤務の経験を生かし、日本国内のジェトロ地方事務所と連携して、中国のバイヤーを日本に招き、日本で地方の中小企業と商談を進めることも効果的だと思います。

 最後に、領事館と日本大連商工会との連携についてお聞かせください。

 三者協力は、とても重要なことです。大連の日系企業は人件費の高騰に加え派遣労働者比率など、様々な問題に直面しています。こうしたことに対しても、三者が一体となって、大連市政府と定期対話を重ねて日本側の要望を伝え、問題解決へ向けて努力しなければならないと思います。さらに、大連に事務所を構えている日本の自治体や地方銀行などとの情報交換も行って、いかに日本の地方を活性化させるか、ジェトロとしてもお手伝いさせていただきます。

 
【経歴】
 東京都出身。1989年にジェトロに入会。1993年に財団法人交流協会に出向して台北事務所勤務、1996年にジェトロ海外調査部中国北アジアチーム、その後は香港事務所次長、海外調査部中国北アジア課長、福岡貿易情報センター所長を経て、今年7月末にジェトロ大連の所長に就任した。

事実と向き合う姿勢

 インタビューの中で、個人的な目標をうかがったら、「中国語をしっかり勉強したい」との返事が返ってきた。
 荒畑所長が、中国語の勉強を口にするのは、「自分の目で確かめたい」という姿勢と共通するのかもしれない。事実と向き合い、より深く理解したい、との思いが込められていると感じた。周囲の情報に流されず、客観的な情報で判断することが、いまの日中関係に求められている。この中国東北地方でも的確な情報を提供し、日本企業の中国ビジネスを成功に導いていただきたい、と願う。

この投稿は 2013年10月15日 火曜日 5:28 PM に Whenever誌面コンテンツ, 巻頭インタビュー カテゴリーに公開されました。

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掲載日: 2013-10-15
更新日: 2013-10-16
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