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岩手県大連経済事務所所長 禹 瑾さん yu jin
「純朴な日本人の姿、文化が息づく岩手県の魅力を、もっと多くの中国人に知ってもらいたい」
死者・行方不明者が約1万9000人(2013年1月末現在)に上った東日本大地震から今年3月11日でちょうど2年。沿岸部を中心に甚大な被害を受けた岩手県は中国ともかかわりが深く、大連でも災害直後から支援の輪が広がった。同県唯一の中国出先機関である大連経済事務所の禹瑾所長に、これまでの取り組みや今後の活動などについてインタビューした。
2011年3月11日に起きた東日本大震災から間もなく2年を迎えようとしています。岩手県は大きな被害を受けましたが、現在の復興状況をお聞かせください。
私は今年1月末に岩手県庁へ出張してきました。そこで感じたのは、「いのちを守り 海と大地と共に生きる ふるさと岩手・三陸の創造」を目指す復興計画に基づいて、新たな地域社会づくりへの歩みが着々と進んでいる、ということでした。被害の大きかった沿岸部では水産加工業もようやく立ち上がるなど、住民の生活は安定を取り戻しつつあります。とは言っても、がれきの処理は依然として深刻で、仮設住宅で暮らす被災者もまだたくさんいらっしゃいます。それにも増して、被災者の心の傷はいまも癒えることはありません。
禹所長は2年前、どのような状況で大震災を知ったのでしょうか。
大連の事務所で仕事をしていた時です。日本の東北地方で大地震が発生した情報が入り、県庁に早速、電話を入れたところ、揺れは大きかったが大丈夫、とのことでした。東北地方は地震がよく起きるので、私もさほど深刻には受け止めてはいませんでした。しかし、間もなくしてテレビに映し出された津波の襲来には驚かされました。慌てて県庁へ電話連絡をしてみましたが、すでに通じませんでした。
被災後、初めて現地を訪れたのはいつごろだったのでしょうか。
4か月後の7月でした。沿岸部の被災地を中心に回りましたが、とにかく悲惨でした。釜石市では壊滅状態で大型船舶が陸地に乗り上げたままでしたし、水産加工業も全滅でした。大槌町では地震発生直後、役場の広場で災害対策会議を開いていた時に津波に襲われ、加藤宏暉町長らが犠牲になってしまいました。現場の時計は発生時刻の午後2時46分を指したままでストップ。心が痛みました。
遠く離れた大連でも支援の輪が広がり、禹所長の事務所でもこれまでに様々な活動を行ってきました。
私たちの事務所ができることといえば、岩手と中国の経済、文化面での交流促進を通して被災地支援を続けて行くことです。大連市西崗区が友好都市提携を結んでいる花巻市に贈った義援金の橋渡しをしましたし、雲南省プーアル市が、特産品のプーアル茶を被災者の健康、ストレス予防に効果があるということで2000万円分の粉末プーアル茶を岩手県に贈ったこともありました。
大連事務所として、今後の復興支援にどのような活動を展開されて行くのか、お聞かせください。
これまでは中国マーケットを目指す南部鉄瓶や日本酒など民間企業のサポートをして、成果も上げてきました。今後も継続する一方で、岩手県への理解を深めてもらうため、観光事業にも力を入れて行く方針です。私は「岩手県民は魔法瓶のようだ」と、いつも言っています。外見は冷たそうに見えても心の中は温かく、長く付き合えるのです。そんな純朴な日本人の姿、文化が岩手には息づいています。また、動植物を育む大自然もあり、日本の素晴らしさが凝縮されています。もっと多くの中国の人たちに岩手の魅力を知ってもらうため、岩手へのツアー企画を応援していきたいと思っています。
岩手県内では中国人研修生を受け入れる企業も多く、中国との関係も深いですね。
岩手県の達増拓也知事は中国語を理解できますし、大船渡市の戸田公明市長も中国語を話すことができます。そんな中国との縁もあり、中国の緊急援助隊災が震災後間もなくして政府チャーター機で来日し、大船渡の被災現場に入って活動を続けました。また、中国側から救援物資も被災地に届けられました。こうした中国側の数々の厚意を受け、知事は心から感謝するとともに、県民一丸となり早期復興を実現するという決意を新たにしております。
【中文】
【経歴】
1964年、吉林省生まれ。大連工業大学を卒業後、大連市政府に入庁し、外事弁公室で3年間勤務。1989年に岩手大学に留学、卒業後は花巻温泉のホテルに就職、サービス業務に従事した。2005年4月には中国では岩手県初の出先機関となる岩手県大連経済事務所が開設され、初代所長として赴任した。
【取材を終えての見出し】
岩手に精通した架け橋役
岩手県産品の中国市場への進出は目覚ましい。日本酒は岩手ブランドが確立し、南部鉄瓶も浸透しはじめている。こうした岩手県産品の頑張りは、「禹瑾所長の功績」との声を聞いたことがある。しかし、当の本人は「各企業の努力。事務所は応援しただけ」といたって謙虚だ。
日本各自治体の出先機関トップはほとんどが日本人。その中で岩手県にも精通した禹所長は異色であり、架け橋役としてうってつけの人材と言える。観光分野でもその手腕が期待される。
猪瀬 和道
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更新日: 2013-03-09
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