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在瀋陽日本国総領事館総領事 田尻 和宏さん Tajiri Kazuhiro
「対日感情は決して悪くないと感じています」
中国中央政府による東北振興策によって発展目覚ましい東北三省を管内とする在瀋陽日本国総領事館に、田尻和宏総領事が着任して半年が経った。冷え込んだ日中関係の中で、日本は中国東北三省とどのように向き合えば良いのか。外務省でも中国専門家として知られる田尻総領事に聞いた。
田尻総領事が瀋陽に着任されてちょうど半年になりますが、管内である東北三省の印象はいかがでしょうか。
私は外務省で日中関係に長く携わり、中国駐在期間も通算18年になります。しかし、これまで東北三省での勤務経験はなく、中国で残った唯一の地域でした。それだけに、東北地方に住んでみたいという気持ちもあり、今回の瀋陽勤務をとても喜んでいます。これまでの半年間の印象は、まだまだ発展の可能性のある地域であり、歴史的、人的にも日本と東北三省の結びつきの強さを感じています。そして朝鮮半島との関係の深さも他地域にはない特徴だと思います。
日本との関係ではどのようなところに結びつきの強さを感じられているのでしょうか。
大連や長春などには旧満州時代の建物が現存し、当時の名残を感じさせます。また、日本への留学経験者が多いのも特徴で、中国の他地方に比べると圧倒的に日本語人材の層が厚いですね。中国の東北三省は(日本人にとって)負のイメージがありますが、対日感情は決して悪くないと感じています。
確かに朝鮮半島との結びつきが強く、特に瀋陽の街にはハングル文字があふれていますね。
広州には45か国ほどの領事館がありましたが、北朝鮮はありません。しかし、瀋陽にある7か国の領事館の中には北朝鮮も入っていて、中国側が主催するパーティーなどには北朝鮮の領事館関係者と同席することもあります。それに黒竜江省や長春などには北朝鮮からのミッションがどんどん入ってくる。ここは朝鮮半島が地続きだということを実感しますね。
ところで田尻総領事と言えば、四川大地震の際に日本政府の国際緊急援助隊医療チームの団長として活動され、中国政府からも感謝の気持ちが伝えられました。
四川大地震が発生したのは2008年5月12日ですが、20日から日本の医療チーム23人が派遣され、成都の華西病院の敷地内にテントを張って医療活動を行いました。医療チームは救助チームとともに日本の評価を高めることになりましたが、当時、うれしかったことは、中国各地から動員された中国人医師や看護師が、日の丸を目にしてテントをのぞいてくれたことです。日本に留学経験のある人たちで、懐かしく思ってくれたのでしょう。こうした日本の医療チームの活動はネットでも紹介されているだけに、いまでも中国の関係先を表敬した時などは、半数の方から感謝の言葉をいただきます。
しかし、いまは日中関係が冷え込んでしまい、国交正常化40周年もかすんでしまいました。今後、どのように向き合って行けば良いのでしょうか。
2012年夏までは瀋陽ジャパンウイークなど大型イベントが行われ、大いに盛り上がりましたが、その後はイベントなどの中止が相次ぎ、寂しい状況になってしまいました。しかし、四川大地震で日本の援助隊の活動など、中国のみなさんの心の中に残っていることは決して少なくありません。例えば黒竜江省に稲作を伝えた日本人の農業技術者らへの感謝の気持ちは、今なお忘れられていません。関係改善のためには交流を深めることが大切であり、まずは民間交流、特に経済面から相互交流を図るべきだと思います。
この東北三省は哈大高鉄が開通するなど、社会インフラが急速に整ってきました。最後にこの地方の将来性についてお聞かせください。
東北三省は重厚長大な国営企業が多く、かつて発展をもたらした産業は窮地に追い込まれてきました。しかし、改革政策が成果を上げてきて、国営企業のいい面を残しつつ、知的集約産業に移行するなど身軽になってきています。また、高速道路網が整備され、高速鉄道も開通するなど交通インフラも充実してきました。大連―ハルビン間が行き来しやすくなったことは、ビジネスチャンスも生みます。加えてこの東北三省は、日本語人材が多いなど日本との関係の基礎がすでに出来上がっています。今後は日本企業などの関心はこの地方に向いてくることでしょう。
在中国中央政府的东北振兴政策下东北三省发展显著,日本国驻沈阳总领事馆田尻和宏总领事上任已有半年。在中日关系紧张的情形下,日本与东北三省将怎样合作才能有利发展。这次我们采访了外务省里有中国通之称的田尻总领事。
「我虽然在外务省长期从事有关日中关系方面的工作,在东北三省工作还完全没有经验。这次能在沈阳工作让我很开心。通过半年多的工作,我觉得这里还有很大的发展性,无论是历史方面还是人文方面都与日本有着很强的联系。还有和朝鲜半岛的关系上,地域的优势是其他地方没有的。想要改善中日关系紧张的局面,还得要加深两国间的民间交流,特别是经济方面的交流尤为重要。」
【経歴】
1952年2月、石川県生まれ。1976年、外務省に入省。北京、南京で語学留学した後、本省に戻って中国課、条約課に配属。1986年に在中国大使館へ赴任し、その後は米国勤務を経て、中国課、上海総領事館、重慶総領事館、中国課、広州総領事館に勤務、2012年5月、瀋陽総領事館に着任した。
【取材を終えての見出し】
インタビューを終えて
東北地方へ30年の思い
外務省に入省以来、中国関係のエキスパートとして勤務してきた田尻和宏さん。中国・東北地方とのかかわりは、残留孤児の訪日調査が初めてだったという。調査は1981年以来毎年行われ、田尻さんは当初の調査を担当したが、残留孤児の多くは東北地方で、遥か遠い異国の大地に思いを馳せていた。
しかし、18年間の在中国勤務で、意外にも東北地方の勤務は瀋陽総領事館が初めて。「東北地方に住んでみたかったのです」。その言葉に訪日調査にかかわってから30年の思いが込められている、と感じた。
猪瀬 和道
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更新日: 2013-01-08
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