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大連市青年書法協会副秘書長 大連浜海書画院院長 李 新さん Li Xin

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「書は中日に共通する文化。難しい問題がある時こそ、文化交流が相互理解を深める手段となります」

 今年4月に富山市で開かれた日本美術家連盟北陸地区会員展に、大連の若手書法家として活躍する李新さんが、外国人作家として初めて特別出品した。日中の共通する漢字文化、書文化を通して両国をつなぐ李新さん。今回の出品の経過と今後の活動テーマなどに就いて聞いた。
 中国国内で書画家として活躍されている李新さんですが、日本の美術展にも出展されたとお聞きしました。

 ええ、今年4月12日から4日間にわたって富山県民会館美術館で開かれた「第4回日本美術家連盟北陸地区会員展」に特別出品させていただき、書画作品3点を日本のみなさんに見ていただきました。日本人以外の外国人作家として出品したのは私1人でした。とても光栄に思っています。

 どのような経過で出品されたのか、お聞かせください。

  大連の私の友人が、「素晴らしい作品を日本のみなさんに披露したい」と、現在は帰化して富山市に住んでいる知り合いの富山県華僑華人会会長の林広麗さんに話を持ちかけたのです。林さんにも気に入っていただき、話はトントン拍子に進んで、特別出品が実現しました。

 李さんも会場に行かれたのでしょうか。

 残念ながら、パスポートの手続きが難航して、結局は行くことができませんでした。これまで日本を訪れたことは一度もないだけに、いずれは夢を実現したいと思っています。

 このほかにも芸術交流をしたご経験はあったのでしょうか。

 今回の会員展に併せ、富山市内のチャイニーズレストラン「頤香林」で3月末から4月末にかけて開かれた美術展「春の彩展」にも8人の日本人作家とともに、書画作品20点を出品しました。この「頤香林」の経営者からも評価され、店名の文字は私が書かせていただきました。しかし、日本との交流は今回の2つの展示会が初めてでした。

 書は中日に共通する漢字文化の世界ですが、作風には両国の違いもあるのでしょうね。

 日本の書家の作品も見せていただきましたが、中国の作風とは随分違いますね。日本の書家の作品は、文字数が少なくてダイナミックに書かれています。全体のバランスも重視され、芸術性が問われるようです。一方、中国の書家の作品は、唐詩など文字数が多いので、文字そのものも小さい傾向にあります。文字とともに、詩の意味も大事にされているのです。どちらが良いとか悪いとかではなく、これはお互いの歴史や習慣の違いから来るものでしょう。いずれにしろ、書を通した相互理解を深めることによって、より作品性を高めたいと思います。お互いの良さを知り、自らの芸術性を上げるためにも、もっと交流しなければならないと思っています。

 ところで日本と中国は、この数年で難しい多くの問題が生じています。書家の交流に悪影響は与えないでしょうか。

 国家間の問題と、民間である文化面での交流は別問題です。中国と日本は同じ漢字圏であり、書は共通する文化です。言葉は通じなくても漢字を見れば、だいたいの意味は分かります。それだけ書は、中日に共通する文化なのです。国家間で難しい問題がある時こそ、こうした文化交流が相互理解を深める手段となるのではないでしょうか。

 今後の活動についてお聞かせください。

 今年始めには北京にもアトリエを設け、作品づくりに取り組むとともに、多くの書家と交流を深めたいと思います。その一方で、日本との文化交流にも力を注いで行くつもりです。6月31日と7月1日には富山市内で美術オークションが行われ、私の作品も出品されることになりました。そして念願の日本を訪れ、多くのみなさんに私の作品を見ていただき、日本の書道家とも交流したいと願っています。 
 
【経歴】
 1964年4月、瀋陽市生まれ。中国魯美付属中を卒業後、朝陽市の印刷会社に勤務し、書籍装丁の仕事に従事。その後、紅山芸術館館長を務め、5年前に大連へ移住して作家活動を展開。大連市青年書法協会副秘書長のほか、中国書画家協会遼寧分会会員、国際(中国)書法家協会大連分会理事などの要職を務める。

【取材を終えて】
自然体で日本書道家と交流を
 李新さんを知ったのは、中国の知人が「ぜひ紹介したい書家の先生がいる」との勧めからだった。今回初めてお会いして、その人柄の素晴らしさに惹き付けられた。
 書画界の要職を務め、若手作家として活躍する李さんだが、気さくで、笑顔を浮かべながら質問に丁寧に答えてくれた。構えずに自然な姿勢は作風にも現れているようにも思える。先入観年のない自然体で、ぜひとも日本の書道家と交流を深めて、書の世界から両国相互理解の風を送っていただきたいと思う。

猪瀬 和道

この投稿は 2013年7月11日 木曜日 3:16 PM に Whenever誌面コンテンツ, 巻頭インタビュー カテゴリーに公開されました。

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掲載日: 2013-07-11
更新日: 2013-07-11
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