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大連スイッシュホテル総経理 東北財経大学観光ホテル管理学院院長 謝 彦君さん
立地の利便性やサービス面などから日本人観光客に支持を得て来た大連スイッシュホテル。この五つ星ホテルに観光・ホテル管理学の学者でもある謝彦君さんが就任して半年が過ぎた。論理と実務を融合させた産学協同の実践ケースとして、その手腕が注目されている。今後の方針や日本との関係などについて語ってもらった。
産学協同で五つ星ホテル経営
謝 彦君さん
――中国の観光・ホテル管理学の権威である謝彦君さんが大連スイッシュホテルの総経理に就任して6か月が経ちました。実務に携わった感想はいかがでしょうか 。
「私は長年にわたって観光・ホテル管理を学問として研究し、学生たちに理論を指導してきました。この半年間は実務にも携わりましたが、学問と実践では取り組み方に違いがあることを実感しました。私は総経理に就任して以来、ホテル内の状況を把握するとともに、競争が激化している大連のホテル業界の実情を調べるなどしてきました。この現状認識によって、組織内を含めて様々な改良を加えているところです」
――まさに産学協同を実践していらっしゃる謝さんですが、どのような手応えを感じていますか。
「研究者として非常に素晴らしい機会を与えられたと思います。欧米の大学では大学で五つ星級のホテルを所有しているか、外部の一流ホテルと提携して学生たちの実践の場として活用しています。中国には観光・ホテル学を教えている大学が500校もありますが、どの大学もホテルを持っていません。実習のできる五つ星ホテルがあるのは、私どもの東北財経大学が唯一のケースとなります。来年からは学生をスイッシュホテルで研修させ、実践能力を身につけさせたいと考えています」
――学者である謝さんが、どのような経過で五つ星ホテルの総経理に就任されたのでしょうか 。
「スイッシュホテルの経営母体は、中国企業ベスト100の第60位に位置している大商集団です。この大商集団が観光・ホテル学院が全国2位の水準であることに着目し、院長である私に白羽の矢が立ったのです。大商が経営するホテルはスイッシュが唯一ですが、来年には盤錦に超高級ホテルをオープンさせる予定で、集団としてもホテル経営に力を注いでいるところです」
――先ほど謝さんがおっしゃった新たな取り組みについてお聞かせください。
「組織内部ではサービスのレベルアップを徹底させています。全スタッフが笑顔でお客様に接する〝微笑み運動〟を展開し、気持ちよくご利用していただくことが基本です。中国のホテルはこうした基本が忘れられがちです。また外部的にはインターネットの活用を重視しています。ネット予約は日本に比べてまだまだ少ない状況ですが、将来は必ず増えてきます。そのための整備も進め、さらにはスイッシュホテルの特徴である周囲の環境、立地の素晴らしさ、企業理念などを広く伝えたいと思っています」
――スイッシュホテルと言えば日本人宿泊客が多いことで知られています。その特徴についてのお考えをお聞かせください。
「建物の設計、施行は日本企業によるもので、立地の良さなどからも日本人のお客様に好まれています。宿泊は50パーセント、アパートメントは85パーセントが日本のお客様です。私たちにとって日本人はもっとも重要さと考えています。このため日本人スタッフ3人のほか日本語のできる中国人スタッフもそろえ、満足していただけるサービスを心がけています」
――3月11日の東日本大震災による影響はいかがでしょうか。
「大きな影響を受けました。3、4月は予約の取り消しもあり、例年の30パーセント減となってしまいました。4月15日から1か月間にわたって北九州市物産展や日本文化、日本食の紹介などの〝日本フェア〟を開催しましたが、これも大震災の影響で今ひとつの状態でした。いずれは回復するだろうと思いますが、被災地の位置早い復興をお祈りするとともに、日本からの観光客の復活を願っています 」
――謝さんは日本との関係も深いと聞きました。
「日本とは縁がありますね。和歌山大学に観光科が開設された2008年春、 和歌山大学に招かれて日本を訪問し、以来、和歌山大学と東北財経大学の学術交流を続けています。また、元経済産業大臣の二階俊博さんとも親交が深く、東北財経大学観光ホテル管理学院の名誉院長にも就任していただいています」
――最後に今後の大連の観光についてお聞かせください。
「大連にとって有望な観光資源のひとつが旅順です。歴史的にも特別な意味を持ったところであり、この旅順の魅力を引き出すことも今後の観光発展に有効だと思います。また、市内に残された古い建物も計画的に保護、保存して行くことも観光振興にとっても大切だと思っています」
【経歴】
謝 彦君さん
1960年3月、鞍山市の岫岩生まれ。東北財経大学経済学部(企業管理専攻)卒。イギリス、アメリカへの国費留学を経て1999年に同大学観光ホテル管理学院の副院長、2003年には院長となり、2010年12月に大連スイッシュホテルの総経理に就任した。中国旅游研究院学術委員、中国旅游教育分会副会長も務める。
【インタビューを終えて】
物腰の柔らかさと行動力
経歴が示す通り、国際派であり、中国の観光・ホテル管理学ではトップクラスの学究者。しかし、物腰は柔らかく、落ち着いた態度と話し口調で笑みを絶やすことはない。観光・ホテル業でもっとも大切な接客マナーに通じるものがある。
その反面、行動力もすごい。就任直後は社内状況の把握に務め、幹部とスタッフ、スタッフとお客、ホテルと周辺地域、さらにはホテル相互の協力関係の構築を企業理念として打ち出した。儒教思想を取り入れ、サービス業の基本を改めて明確にしたのだ。
ハード面でも着々と整備を進めている。五つ星ホテルならではの〝仕掛け〟が徐々にベールを脱ぐことになるだろう。学者と実業家の二足のわらじを履く謝さんに目が離せない。
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更新日: 2011-10-10
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