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安藤 勇生さん 日本貿易振興機構(ジェトロ)大連事務所 所長、首席代表

安藤 勇生さん 日本貿易振興機構(ジェトロ)大連事務所 所長、首席代表

安藤 勇生さん 日本貿易振興機構(ジェトロ)大連事務所 所長、首席代表


日本貿易振興機構(ジェトロ)大連事務所 所長、首席代表 安藤 勇生(Ando Isao)さん

日本貿易振興機構(ジェトロ)大連事務所 所長、首席代表 安藤 勇生(Ando Isao)さん

「日本企業と中国政府を結ぶ提案のできるご用聞き役として、両者の利益が上げられるよう、頑張って行きたいと思っています」

 日本貿易振興機構大連事務所の所長、首席代表として、安藤勇生さんが着任した。民間企業からジェトロに入り、万博や各種イベントなど通してジャパンブランドを売り込んできた市場開拓のベテラン。中国は経済構造の転換期を迎え、日本企業も生産拠点としてだけでなく、内販に向けた対応にも迫られている。それだけに安藤さんが培ってきた経験と手腕に期待がかかる。

 安藤さんは上海に次いで、2度目の中国勤務として大連に赴任されました。まずは大連の印象についてお聞かせください。

 まだ赴任して3週間(取材した3月11日時点)ですが、街の印象としては、上海に比べて落ち着いた都市ですね。人が少なくてゆったりとしていて、物価も安い。暮らしやすそうな街だと、これからの仕事と生活面が楽しみになってきました。

 経済という点では、大連をはじめとする東北三省をどのようにご覧になっていますか。

 赴任してから遼寧省や大連市の政府関係者、日系企業の方々とお会いしてきましたが、ここでも上海との違いを肌で感じました。上海は巨大な国際都市であり、日本は世界各国の中のひとつの国に過ぎません。しかし、大連や遼寧省にとって、日本は密接な関係にある特別な国なんですね。日本や日本企業を頼ってくれ、「今後はもっと日本と協力関係を強化したい」と、明確に言ってくれた政府関係者の言葉が、心に残っています。上海時代にはないことでした。

 その東北三省は減速する中国経済の中でも、厳しい状況にありますが。

 そうですね、国営企業を中心とした重工業関係の企業は、李克強首相が言われたように、体質改善のできない〝ゾンビ企業〟がまだまだ多い。地元の政府関係者の方々と話をすると、経済の先行きに関して強い危機感を抱かれています。それだけに、日本に対する期待が大きいのだと感じました。

 その一方で、大連などに進出した日系企業も大きな転換期を迎えていますね。

 ジェトロ大連では日系企業を対象にした各種相談業務も行っていますが、法務相談の中で多くなってきたのが撤退案件です。とりわけメーカーさんにその傾向があり、生産拠点を中国から東南アジアへ移転される日系企業が少なくありません。中国における日系企業に求められる産業構造が変わってきたのかもしれません。中国側も「従来の輸出から内販へ転換して欲しい」と、日系企業の転換に期待しています。

 ところで、安藤さんはジェトロに入構前から、愛知万博の事務局やドイツ・ハノーバー万博日本館の事務局、さらにイタリア・ミラノ万博の副館長も務められている〝万博のエキスパート〟ですね。

 確かに万博と中国は、私のライフワークと言っても良いくらい、のめり込んできました。上海時代は事業担当副所長として、日本酒や食品類の輸出拡大を目指して、スーパーで食品イベントを開き、レストランのオーナーや料理人を対象にして柚子や鰤(ぶり)など、日本の食材を使った調理説明会も開催しました。変わったところでは、重慶にある温泉地と草津温泉や観光ビジネスの企業さんと日中温泉交流会なども実施しました。また、知財保護も重要であり、中国の税関に赴いて日本製品の偽物と本物を見分ける真贋識別セミナーも。とにかく日々、日本と日本の製品をどうすれば売り込むことができるか、そればかりを考えてきました。

 大連でもその経験と手腕が期待されますね。

 ジェトロの使命は、日系企業の利益を守り、発展させることにありますが、それに加えて地元経済の環境を良くしていかなければなりません。両者を盛り上げていくためには、市場は何を求めているのかを知ることが第一。ニーズに合わないものは失敗します。日本が売りたいもの、中国が欲しいものは何か。まず聞いて知ることが大切で、対話を続けていかなければなりません。そのためにも、私はご用聞きに徹して、双方に提案をしたいと思っています。

 市場開拓という面で、どのような分野が有望だとお考えでしょうか。

 ジェトロ大連の事業として、日系企業支援のためのセミナーや商談会の開催を継続するのは当然のことですが、新たな分野も開拓しなければなりません。そのひとつが高齢者産業。例えば高齢者向けのスマートモデルハウスを開設して、バリアフリーや日本式の老人介護施設を中国側に提案できれば良いと思います。日本の高齢者向け献立の食事体験会も面白いかもしれませんね。

 最後に大連での決意、抱負をお聞かせください。

ジェトロは国の機関でもあり、敷居が高いと感じている方もいらっしゃるかと思います。しかし、私たちは国や日本企業のために働くのが使命です。そのためには、企業のみなさんに相談に来ていただきたいですね。先ほども言いましたように、日本企業と大連など地元を結ぶご用聞き役として、両者の利益が上げられるよう、頑張って行きたいと思っています。

  安藤勇生先生就任了日本贸易振兴机构大连事务所的新所长。从民营企业进入到JETRO,他是亲自策划了许多活动的市场开拓的老手。我们也十分的期待安藤所长向我们展示他积累的经验和才能。
  “为了给予日企支援和帮助,当然会继续举办相关的研讨会和商谈会,但是也不能放弃开拓新的领域。这其中之一就是高龄者产业。如果可以向中国方面提议就好了,我希望开设面向老人的样板间,无障碍设施和日式老人护理设施。另外,JETRO作为国家机关,为国家和日企效力是我们的使命。作为日企和大连本地相互联系的纽带和倾听者,为了双方的利益都能增加,我也会继续努力的。”

安藤 勇生(Ando Isao)さん

 1962年、名古屋市千種区生まれ。大学卒業後、民放テレビ局に入局し、その後広告代理店勤務を経て、2006年4月に日本貿易振興機構に入構。2009年9月から2014年2月まで同機構上海事務所副所長、2015年4月から11月までミラノ万博日本館に副館長として勤務し、今年2月に大連へ赴任した。同機構入構前にも愛知万博、ハノーバー万博日本館の事務局に出向するなど、4度の万博に携わったエキスパート。

インタビューを終えて
時代が呼び込んだ適材
 大連へ赴任して間もない安藤勇生さんだが、イベント会場などでお会いする機会があり、すでにジェトロ大連の顔としてフル回転されている。笑顔と物腰の柔らかさがとても印象的で、〝お役人さん〟らしさを感じさせない。テレビ局から広告代理店、さらには万博など機構外の空気も吸って来た経歴が、そんな安藤さんの〝栄養〟になっているのかも知れない。
 中国経済はいま、「世界の工場」からエンジンの転換期を迎え、日系企業もそんな変革の波に、目指す針路が見えにくくなっている。それだけに視野を広げて市場を冷静に分析する判断力が求められる。柔軟な安藤さんの登場は、時代が呼び込んだのかも知れない。

猪瀬 和道

この投稿は 2016年4月29日 金曜日 12:25 PM に Whenever誌面コンテンツ, 巻頭インタビュー カテゴリーに公開されました。

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掲載日: 2016-04-29
更新日: 2016-04-29
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